チベット・ツェタンに行くなら訪れるべき3ヶ所とは?

文・写真●川上 哲朗(東京本社)ラサから見て南の方角、広くブータン国境までのエリアをチベット語でロカ、中国語では山南地区と呼ばれています。この記事では山南地区の首府である「ツェタン」をベースとし、サムイエ寺・ヘポリの丘・チンプー渓谷など周辺の見所を紹介していきます。

 

チベットの京都・ツェタン

正面がツェタン
バスの車窓より:ヤルンツァンポを渡って正面の町がツェタン

ラサからおよそ150km。舗装された道を4時間程度揺られると、いかにも中国の地方都市然としたツェタンの町並みが姿を現します。整然とした景観とは裏腹に、ツェタンは初代チベット王が降臨した場所であり、歴代の王の墓もここに位置しています。町の歴史はラサより古いとされ、謂わばチベットの京都や鎌倉と言っても差し支えないでしょう。また、伝承神話では全てチベット人の発祥の地とされています。人伝えに聞いた所によると、それは大体以下のようなお話しなのだそうです・・・

 

第一話:悪女との結婚

昔々、ツェタン近くの洞窟で1匹の猿が修行を積んでおりました。ところがある時、羅刹女という鬼神がやってきて、この猿を見初めてしまったものだから大変です。猿は「恐ろしい羅刹女と結婚したくはない」と必死に断りましたが、「結婚しないとこの世の生き物全てを食べてしまうぞ!」という彼女の言葉に震え上がってしまいます。困った猿が観音様に相談した所、曰く「羅刹女が今後悪さをしないと誓うならば、結婚してあげなさい」。そこでめでたく二人は結ばれる事になりました。その後子供達も産まれ、家族睦まじく暮らしましたとさ・・・めでたしめでたし。

 

第二話:食糧危機と脱毛問題

ツェタン近郊で幸せに暮らしている猿一家でしたが、実は深刻な問題が起こりつつありました。子供が増えるのに従い、食糧難の時代がやってきたのです。妻から「あんた!なんとかしなさいよ!」と尻に火をつけられた猿は、またしても観音様へ相談に行きます。観音菩薩は頷き、「これを蒔けば食料に困ることはない」と、とある種を手渡しました。育ったこの作物を食べた猿たちは、見る見る間に身体の毛が抜け頭も良くなり、ついには立派な「人間」になったのです。そして観音様が手渡した種こそ、その後チベット人の主食となる大麦の種だったのでした・・・めでたしめでたし。

 

 神話の真偽はさておき、今でもチベタン家庭は“かかあ天下”が多いという噂です。クワバラクワバラ。

 

チベット最古の僧院・サムイエ寺

サムイエでサム・イエー!
サムイエゴンパにて:サム・イエー!とお調子づくツアーメンバー

ツェタンから北西方向に位置する「サムイエ寺(ゴンパ)」は、チベット最古のチベット仏教僧院です(※ラサのジョカン寺は仏像を安置する「寺院」であって、僧侶が修行する「僧院」ではない)。以前はヤルンツァンポ川を渡るのに渡船を使っていましたが、現在では立派な橋が2つ掛かっており、ツェタンから車でおよそ1時間半で到着できます。

8世紀にチベット仏教を国教としようとしたデツェン王が立案しましたが、創建時はボン教など土着の神々達が悪さをしたため、なかなか作業が進まなかったという逸話が残っています。結局、インド(今のパキスタンあたり)から密教行者のグルリンポチェを招き、その神通力により無事に建立する事ができたそうです。サムイエ寺の壁画には、グルリンポチェが手から火を出す様に驚く国王の様子が記されています。

十一面千手千眼観音
困っている衆生を見るため目が千個ある「十一面千手千眼観音」
靴の名前だろうか?
靴の名前だろうか?学校機能を持っていたのを伺わせる


サムイエ寺はニンマ派の総本山であり、寺院そのものが「立体曼荼羅」を表しているとして有名です。本殿を須弥山に見立て、周囲には仏教宇宙のエレメントを司るお堂やチョルテンが設置されています。僧院内部には本尊のお釈迦様や大日如来をはじめ、グルリンポチェに調伏された土着神(あまりに恐ろしい表情をしているため、顔に布が掛けられている)が祀られている場所など“おどろおどろしい”部屋もあります。

死後、チベット人の魂は輪廻転生をする前にこの僧院を訪れるそうです。しかし死者は目が見えないとされているため、寺までの道のりを覚えておこうと生前から参拝に訪れる人が後を絶ちません。

 

宇宙を見下ろす丘・ヘポリ

タルチョの隙間から見えるサムイエ寺
ヘポリの丘から:タルチョの隙間から見えるサムイエ寺

サムイエ寺の裏手には「ヘポリ」と呼ばれる丘があり、丘の上からは仏教の宇宙感を体現する立体曼荼羅の様子が手に取るようにわかります。登山口はサムイエ寺院側と丘を越えた反対側の2ヶ所あり、途中の展望台までは階段が整備されています。高度順応がバッチリの方は、往復1時間程度で山頂までのハイキングも可能です。

ヘポリの山頂部は双耳峰になっています。奥側のピークには小さなチベット仏教のお堂があり、手前側には“ツェン”と呼ばれる地元の神様の赤い廟が安置されています。“ツェン”はチベタンから畏怖される存在だそうで、怒らせると大変恐ろしいことが起こると信じられています。決してここで立ちシ◯ンなどをしないようお気をつけ下さいね。なお、ヘポリの丘の周囲をコルラ(巡礼)する人もいるようです。

ヘポリからのパノラマ
ヘポリからのパノラマ:右手にサムイエが見える(クリックで原寸大)

 

“聖地感”溢れる谷・チンプー渓谷

尼寺とチンプー渓谷
尼寺の入り口から:背面の山に108の瞑想窟があるとされる

サムイエ寺から北東へ向かうと、チンプー渓谷と呼ばれる谷があります。ここには8世紀にグルリンポチェが開いた108もの瞑想窟が存在すると言われており、今でも多くのニンマ派行者が修行をしています。以前、修行中の僧侶に高僧の写真を差し出した不届者がいたということで、残念ながら現在は観光客の立ち入りが禁止されていますが、手前のチンプーウツェという尼寺まではツーリストも訪れることができます。


尼寺からの眺め
高台に建つ尼寺からサムイエ方面を眺める
チンプーウツェ
尼僧がお勤めするチンプー・ウツェ

当然ですが尼寺は女性の僧侶しかおりません。ともすると迫力を感じるチベット寺院の読経ですが、尼寺の場合はこの限りではありません。ソプラノとアルトのユニゾンは、なんとも癒やされるような不思議な響きをしています。ここまで読んでいた方に出血大サービス! 許可をもらって録音した音声ファイルを公開します。



音声ファイル:チンプー尼寺の読経

以前はサムイエからチンプーまで4時間以上かけて歩く人もいたそうですが、現在は尼寺まで舗装路が延びているため、アクセスは容易くなっています。瞑想窟は見学できなくとも、ラサの有名寺院にはない静謐さと“聖地感”は十ニ分に感じられます。


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いかがでしたでしょうか? 今回は筆者の主観でツェタン周辺のお勧めスポット3選をご紹介しましたが、他にもゴンカルチューデ、ユンブラカン、タントゥクツォクラカンなどの見どころは沢山あります。チベットをご旅行される際は、ぜひツェタンまで足を伸ばしてくださいね。

 

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チベット・タイムトラベル 神話の世界から現代へ

ツェタンとラサ、青蔵鉄道で行く天空の湖ナムツォ 9日間

出発日設定2019/06/08(土)~2019/09/14(土)
ご旅行代金388,000円~408,000円
出発地東京・大阪・名古屋

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