第98回●コーヒー ~純喫茶が息づく街~

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小諸の街には喫茶店、それも純喫茶を多く見かけることができる。最近、そんな喫茶店が僕のお気に入りの場所になっている。

店の入り口に鉄道の信号機が置かれた「喫茶・山小屋」は、小諸に引っ越してきた2年前からずっと気にかかっていた。先日、恐る恐るドアを開けると予想通り鉄道マニアのご主人が出迎えてくれた。時計の収集家でもあり、世界各国の年代物の時計が所狭しと飾られている。さらには戦闘機の操縦席の復元もあるのには驚かされた。

駅前の「寿徳」は高速バスや電車の待ち時間によく利用させてもらっている。元和菓子職人のマスターが作るチョコレートパフェがお勧め。「東京人もビックリ」という宣伝文句に、東京人がまさにビックリするのは間違いない。

tibet_ogawa097_11小諸駅

実は小諸の駅前はパフェのレベルがかなり高いことに地元の人たちは気がついていない。値段もボリュームも昭和の時代のままなのである。「キャンディ・ライト」や「甘味処みつばち」のパフェもボリュームがあってお勧めだ。「パフェの街・小諸」、もしくは「純喫茶が息づく街・小諸」で町興しをしてはどうだろうかと、先日、市役所の広報課の方に真面目にアドバイスしておいた。


そんな小諸の街でも「ベル」は40年の歴史を持つ一番の老舗。カウンターは常連の年配客で埋まっていた。目の前で2代目のマスターが鮮やかな手つきでコーヒーを入れてくれる。周りから丁寧にお湯を注いでいくと、コーヒー豆粉は浅間山が噴火するかのごとく中央部から盛り上がった。思わず「おおー」と声を上げてしまった。芸術だ。

tibet_ogawa097_31サンカフェの看板

最近、1番のお気に入りは駅前スクランブル交差点に面したビルの2階にある「サンカフェ」。いままで店の存在に気がつかなかったが、たまたま、入り口に看板を出しているマスターに声をかけたのが切っ掛けで知り合った。夜はお酒も飲めるので、よく長居しつつ、島崎藤村を気取って原稿を書いている。けっこう僕は形から入るタイプなのだ。元柔道家の若いマスターは、見かけによらず?手先が器用で料理もコーヒーも、チョコレートパフェも、そしてお喋りも美味しい。

tibet_ogawa097_41座れる立ち食い蕎麦屋

喫茶店ではないが、駅前にある立ち食い蕎麦屋もよく利用している。座って食べるのに、なぜか「立ち食い」と宣伝しているのが面白い。安価な値段で美味しい信州蕎麦を食べることができる。なんでも休日には小諸の農家を回っておいしいネギを直接仕入れているそうだ。そんなネギも一緒に味わってもらいたい。


最近に限ったことではなく、僕はダラムサラに住んでいるときからカフェを気分転換によく利用していた。チベット社会を離れて、たまに1人でのんびりしたいときは、メンツィカンから100メートルほど離れたインド人の店に足を運んでいたものだった。ヘアピンカーブを見下ろす店の裏には乳牛がいて、ほのかに堆肥の匂いが漂ってくる。それは文字通り裏を返せば新鮮な牛乳でチャイを入れていることの証拠。本場のインド人が煎れた濃厚なチャイを味わうことができた。

テンプルロード(寺院通り)にある「ムーンピーク・カフェ」もよく通ったなあ。まだチャイやコーヒーが安価な5ルピー(約15円)という時代に、主食であるトゥクパ(チベット風うどん)やモモ(チベット風の餃子)よりも高い40ルピーという値段でカフェラテを出した最初のお店である。2002年だったろうか。当初は外人しか足を運ばなかったが、最近はチベット人もよく見かけるし、この店に続いて西洋風のカフェが急速に増え始めた。難民チベット社会が豊かになった証拠である。
バグスー通りにある「クロワッサン・カフェ」もその先駆けだ。ここではドキュメンタリーの上映会もやっている。
街の中心部にあるTCV(チベット子供村)カフェは、TCVを卒業した3人の若者が力を合わせて始めた。当初は昔ながらの安いチャイ屋だったが、最近はお洒落な店に様変わりして、お坊さんがたくさん利用している。親友のジグメとはよくここで待ち合わせをしてカフェラテを飲んだものだ。
風の旅行社のツアーで使うバグスーホテルの正面にある「ペマタン」では、1杯25ルピーのカプチーノで何時間も暗誦の練習をさせてもらっていた。しかし、あるとき「ここは自習室じゃないんだ」と釘を刺されてから控えるようになった。すいませんでした。

こうして僕はダラムサラでも小諸でも街を歩いて喫茶店に出会い、お喋りとコーヒーを通して街と触れ合ってきた。もちろん専門としているドクダミやハトムギなどノンカフェインの薬草も好きだけど、コーヒーも同じくらい大好きだ。そもそもコーヒーは茶葉とともに世界で1番、人気のある薬草茶なのだから。この夏は、小諸高原での薬草観察と一緒に、駅前の喫茶店を楽しみにいらしてください。お待ちしています。

(補足)
文中の喫茶店の場所は、駅前で尋ねれば分かると思います。宝探しのように店を探しながら、小諸の街を歩き回るのも楽しいですよ(笑)。

お知らせ

アムド薬草ツアーから帰国後、8月6日から19日まで小諸高原で薬草観察会・薬草茶講座を開催しています。御興味のある方はお問い合わせください。
(お問い合わせ・お申込み) 小川アムチ薬房

・8月2日と9日の昼12時30分くらいからFM長野「小諸もろもろスケッチ」という番組に出演予定です(収録済み)。

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