第346話 ゴォ・タム ~漫談~チベット医・アムチ小川の「ヒマラヤの宝探し」

この本、誰が書いとんねん。(スクリーンショット)

この本、誰が書いとんねん。(スクリーンショット)

テレビ大阪「さらばの、この本誰が書いとんねん(外部リンク)」から出演依頼があり、ちょっと迷って了解の返事を送った。実質、初のテレビ出演である(注1)。番組の趣旨は、衰退している書店業界を盛り上げようというもの。ありがちな文化教養タレントではなく、あえて「さらば青春の光」というお笑い芸人(森田+ブクロ)との掛け合わせで、書店に足を運ばない若者たちの裾野をいっきに広げようという試みに共感したこともある。取り上げる本は僕が2011年に発表した『僕は日本でたったひとりのチベット医になった(amazonページへ)』。

 幼少期は「8時だよ、全員集合」を欠かさず視て育ち、1980年代は漫才ブームを満喫している僕は普通にお笑いが好きで、近年は「探偵ナイトスクープ」を見逃し配信で視聴している。とはいえ教育県とも称されるまじめな富山県出身者でお笑いといえば柴田理恵と立川志の輔(敬称略)くらいしか思い浮かばない。ちなみにチベット語で笑い話のことをゴォ(笑)・タム(話)、またはテン・シクという。四部医典には「歌と冗談と格闘技と弓矢を好む人はルン(風素)体質である(釈義部第6章)」とあり、僕はこの4項目すべてが好きなことから典型的なルン体質(第38話)なことがわかる。チベット社会では日本ほどにお笑いが専門化されていないが、ダライ・ラマ法王が説法に冗談をたくさん交えるように、日常生活には日本以上に冗談があふれている。

 番組の収録は6月某日の13時から。スタジオのある六本木はまったく土地勘がなく、しかもスマホをもっていない僕はプリントアウトした紙の地図を手にキョロキョロ、ウロウロしながらようやくたどり着いた。時間までに近くのカフェでランチを済ませようとしたらコーヒーと小さいサンドイッチで2,000円もするので驚いた。典型的な田舎っぺの上京風景である。そんなこんなで本番前にすっかり体力と気力を消耗したのであった。
 1時間前に現場入りするとすでにスタジオ収録がはじまっていて、「えー! まじかー」と、壁を突き抜けてさらば森田の大声リアクションが聴こえてきた。いままでとは全く異なる非日常空間に足を踏み入れたことを実感する。僕も講演会では「漫談のような」と面白さでは高評価を受けているけれど、あくまで20~100人を対象とした一般レベルのはなしであり、所詮はお笑い後進県の富山出身。さすがお笑い界でいま最も勢いがある大阪出身コンビの「声の張り」はレベルが違う。ブラウン管の向こうの何百万人という人たちを笑わせようとするとこれくらいになるのだろう。たとえるならばプロ野球を目指す大阪桐蔭高校と甲子園での一勝を目標とする富山県代表(注2)くらいの格差があるのでは、となかなかいい喩えが思いついたところで収録がはじまった。つまり、富山県人レベルを自覚して胸を借りるつもりで臨もうということ。
 予想通り「キレ」が凄い。短いことばで鋭いパスを送ってくる。その言葉は僕を通り抜けて、カメラの向こう側にむかって投げかけられている。しかも相手は二人。いままで体験したことのないテンポだ。けっして相手を持ち上げて美談だけで終わらせようとせず、彼らがそうであったように(注3)、人間味あふれるしくじり体験を抉(えぐ)り出そうとしてくる。「結局、チベット医学は現代医学に追いつけないんでしょう。いったいなんの役に立つんですか?」とまったく容赦ない。そういえば、僕が休学して「京都の左京区に潜伏(第161話)」していたことを掘り下げてくれたのは、ブクロが大学時代を京都で過ごしていたからだと後で思い当たった。なにしろ左京区は「京都のなかのインド」と称されるほどに混とんとした雰囲気が2004年当時はあった。

そうしてあっというまに収録時間が過ぎて、最後にお決まりの「帯文」コーナーになり、二人が僕の本のためにウィットをきかせた帯コメントを考えてくれた。実際には3分くらい時間をかけて、「いや、違うなあ」と書き直し、スケッチブックの紙を破り捨てて必死に考えてくれていたのが印象に残っている。

収録後、放心状態のままふたたび六本木の街を歩いて帰途に就いたのだが、普段にはない疲労感が数日はぬけなかった。「やっぱり、テレビ業界の伝える力ってすごいなあ」という素朴な感想である。そして、さらば二人の自由さ、アドリブ感からは、いま若者たちから絶大な人気を得ている理由が分かった気がした。森田さん、ブクロさん、もう若者ではありませんがすっかりファンになって、ユーチューブを視聴しています。

さらば青春の光 向かって左が森田。右がブクロ

さらば青春の光 向かって左が森田。右がブクロ

注1
富山と長野のローカル番組にはちょっとだけ出演したことがある。

注2
1987年  PL学園 4-0 高岡商業
2018年  大阪桐蔭 3-1 高岡商業
2019年   履正社 9-4 高岡商業
なお、甲子園通算勝利数1位が大阪、46位が富山。

注3
大手芸能事務所退社事件、不倫事件などでマスコミから叩かれた過去がある。

さらばの、この本誰が書いとんねん
「さらば青春のテレビ大阪チャンネル」番組公式ユーチューブ(外部リンク)

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