添乗報告記●青蔵鉄道で行く遙かなる聖都・ラサ7日間(2007年4月)

2007年4月28日~5月5日  文●宮内 愛(大阪支店)


ゴルムドで連結された先頭機関車

今年のお正月以来、
急激に知名度を上げた「青蔵鉄道」。

・どんな人が乗ってるの?
・そんな高いところ苦しくないの?
・ねぇ、本当に楽しいの?

という色々な疑問と共にGW添乗の時の潜入報告です!


鉄道車内チケット

西寧を20時過ぎに出発する青蔵鉄道N917次の12号車に乗り込みました。 翌朝から見える景色を楽しみに、3段ベッドの上段に滑り込みました。
硬臥は6人で1つのコンパートメントを利用します。 向かい合わせになった3段ベッドがあり、「上、中、下」とチケットに記載されています。 乗り込むとすぐに乗務員さんが席とチケットの確認にやってきます。
紙のチケットを渡すと、同じ席番号が書かれたプラスチック製のカードをくれます。これは下車時に返して、紙チケットを記念にもらえるので大切に保管しましょう。


鉄道3段目はすぐ上が天井

一番上の段はすぐ上が天井なのでちょっと窮屈ですが、寝るには十分の広さがあり、備え付けの毛布も空調もあるので寒さも感じません。 1日の西寧観光の疲れもあり、消灯と共にすぐに寝てしまいました。 翌朝6時半に起き出すと、外も明るくなりいよいよ草原の始まりです。 7時過ぎに今回の鉄道の旅で一番長い停車駅のゴルムドに到着します。停車時間は約20分。12号車を出発し、ゆっくり先頭車両を目指すと、これからラサまでの長い登りに備えて、ここゴルムドで先頭機関車を増やす作業が行われます。列車の先頭に到着すると、すでに追加の機関車が取り付けられてたところでした。


食堂車で「いただきまーす」

ゴルムドを出発すると、8時前。朝食の時間です。
食堂車へは乗り込んだ時に朝・昼・夕のどれかを食堂で食べられるように予約を入れるので、順番待ちをせずに利用出来て便利です。その他お弁当の販売もあり、食堂車のメニューと同じ食事が食べられます。朝食にはお粥も付いていて、体をいたわります。


カップ麺、ポットなど
準備万端で乗り込む家族も

私が今回利用した6人用コンパートメントには、チベット人の年配のご夫婦が同室です。初めはお互い顔を見合わせてばつが悪そうにエヘヘと照れ笑いをしていましたが、またとないチャンス。
鞄からこのときのために準備したチベット会話帳を取り出し、これからラサまでに仲良くなろうという魂胆でまずは名前を。
え~と、「タシデレー!!(こんにちは)」 ご夫婦はシガツェの出身で、今回現地ツアーに参加し、青蔵鉄道の旅を楽しんでいる本当に仲むつまじく素敵なご夫婦です。
ココシリ自然保護区に入ると外に見える野生動物を教えてもらったり、おやつの時間を共有したり。 まさに寝起きを共にする同居人気分で、これこそが列車旅行の醍醐味。
旅行者以外にも仕事や帰省のために鉄道を利用する人もいて、多くのチベット族、回族は硬座を利用してラサを目指しています。
食堂車に行く時にはこの車両を通り抜けますが、明らかに硬座車両だけ雰囲気が違って、一番魅力的。スイカの種を食べる人、茹で肉をみんなで分け合っている人、ひたすら寝続けている人、音楽を掛ける人などなど。
ことばや笑い声が飛び交い、ごった返している雰囲気を見てツアーのお客様が硬座の車両を「バザール」と命名。 まさにその通り!
私もはじっこにしばし紛れてバザール見学。 人々と目があってまたもやニタッと笑顔で「タシデレー」。


高度表示板

乗り込んでから約17時間、最高地点「タングラ峠」(5,072m)を通 過します。 高度がでる表示盤にしばし見とれてしまい、あわてて深呼吸。
4,000mより高度を上げると、列車内でも酸素をチューブからすっている人をちらほら見かけます。 酸素供給がされていて、空気の薄さは感じませんが、気圧は車外とほぼ同じなのでやはり少し体に応えます。


車窓から見えるそびえた山

添乗の際に持参する「パルスオキシメーター(以下パルス)」で体がどのくらい酸素を取り入れられているか測定する事にしました。 3000m以上の高所では、このパルスが体調管理をするガイドや駐在、添乗とお客様の強い味方になっています。まずは落ち着いた状態で人差し指を器械が挟んで待つ事10秒。体に取り込まれている酸素濃度が%として画面 に現れます。標高が低い場所では97-100位の値ですが、酸素濃度を標高3000と同じくらいに調整している車内ではパルスの値は75-85位 になり、血中酸素濃度も下がっていることが分かります。
反対に脈拍は100mを走りきった時のように100近くまで上昇し、心臓はフル稼働。こんな値を見ると、高所に来ているんだなと実感し、少し緊張しますが、パルスで数値を見ながら大きい深呼吸を4回するだけで、値は90近くまで回復する事がほとんどです。酸素の薄さは目では分からないけれどもパルスで自分の体の中を垣間見て、改めて深呼吸の大切さが分かります。
景色の写真撮影の時は呼吸をするのを忘れないようにする事と、お手洗いは思ったより体力を使うのでゆっくりゆっくりあわてずに。

丸1日列車を満喫しつくした頃に最終目的地ラサ駅に到着です。
ここまでは旅の一つにすぎません。明日からのラサ巡りが旅の本番です。
いつも待っていてくれるラサのガイドに「久しぶり!」と、「明日からよろしく!」を込めて笑顔で固い握手をしました。