第352話 スタンジン~仏法を保持する者~ チベット医・アムチ小川の「ヒマラヤの宝探し」

松本城 僕と妻とスタンジン

松本城 僕と妻とスタンジン

風のラダック現地日本語ガイド、スタンジンさん(以下敬称略)が48歳にして念願の初来日を果たし、信州にも足を延ばしてくれた。高速バスから降りてくると、「ジュレー! ジュレー!(ようこそ)」と互いに声をかけて再会を喜んだ。改めて感じるのだが、この短い音節からなる挨拶はシンプルで相手の心に届きやすい。日本の印象はと尋ねると、「バスの中にトイレがあって驚いた」と真っ先に語ってくれた。さらに「10分遅れます。申し訳ありません」とアナウンスがあったこと、さらにさらに「道には牛がいなくて、クラクションが鳴り響かなくて、みんな交通ルールを守っているので感動した」と、まあ、ここまではインドとの文化ギャップあるある。意外なところでは、レストランで見かけたS字フックの利便性に着目し、すでに100円ショップでいくつか購入済みだという。また、丸くて小さいサーキュレーターはぜひとも買って帰りたいと意気込んでいた。そういえば自分もかつては「空飛ぶ新聞紙」など日本人ならではの視点でインド文化を楽しんでいたのを懐かしく思い出した(第120話)
 
天気は快晴。ラダックほどではないけれど、標高600mなので空の青さが少しだけ濃い。松本城や別所温泉の寺院を案内したところ、さすがはガイドを生業とするだけあって、あらゆることに興味を示している。曹洞宗、真言宗、天台宗のそれぞれの特徴を質問してくれるのはうれしいが、あいにく僕の仏教知識が追い付かない。なんでも、ラダックにいながらも、須磨寺の僧侶が配信するユーチューブを視聴して日本仏教を学び、関空に到着後、真っ先に須磨寺まで参拝に行ったというほどに勉強熱心だ。「勉強しないと、風の旅行社をクビになりますから」と笑っていた。そういえば、自分もダラムサラで風のガイドをしていたおかげで、当初は興味関心の薄かったチベット仏教を学び、結果、いまの仏教の能動的な学びにつながっている(第175話)

愛猫とスタンジン

愛猫とスタンジン

夕方、森のくすり塾に到着した。振り返れば、2015年4月、スタンジンが案内してくれたラダック旅行から帰国後、導かれるようにラダックのようなこの地に出会えた(第193話)。その意味ではスタンジンの来訪は僕たちにとって特別な意味がある。さっそく愛猫チャアがスタンジンに甘えて喉をゴロゴロと鳴らすと「ラダック人はこの喉の音をオム・マニ・ペメ・フム(第338話)の真言を唱えていると捉えます」と教えてくれた。同じチベット文化圏でもラダックでは猫が大切にされているようだ(第261話)

宿泊は森のくすり塾(注)。ときは2月13日。「薪ストーブの炎に照らされながら寝るのは小さいころのザンスカールを思い出しました」と語ってくれた。翌朝は二人で五体投地をしてから一緒に声を合わせて読経をした。三宝帰依、四無量心、文殊菩薩、般若心経、功徳の基盤、ターラ菩薩礼賛経など、あたりまえではあるがスタンジンは流暢に暗誦できる。やはり読経は一人よりは二人、二人よりは大勢がいい(第182話)。ちなみにスタンジンの名は「仏法の保持する者」を意味しチベット語ではテンジンと発音する(第131話)
 

チリン村への道で麻黄を観察する

チリン村への道で麻黄を観察する

午後にはドキュメンタリー「JULLAY 群青のラダック」の上映会を野村監督と森のくすり塾で開催した。ラダック人と一緒に視るラダック映像は、なかなかない貴重な体験だ。参加者のみなさんの反応も気になるが、それ以上にスタンジンがどう感じるのか気になった。すると「日本で視るとラダックがとても素晴らしく感じますね」と興奮しながら語ってくれた。
 
上映後、2015年ラダック旅行中の思い出を参加者に紹介した。それは秘境とされるラダックの中でもさらに僻地のチリン村に車で訪れたときのこと(第179話)。荒涼とした道端に二人の女性が座っていることに気がついた。どうやらレーまで乗せてくれる車を待っているようだ。そして3時間ほどの滞在のあとに帰路につくと、あの女性たちがその場所でそのままの状態で座っているではないか。おしゃべりを楽しんでいたのか疲れた気配はみえない。「小川さん、乗せてあげてもいいですか」というスタンジンの提案にもちろんOK。きっと僕たちが来なければ、明日もこうして座り続けていたのだろう。こんな出来事に僕はたいそう感動したけれど、ラダックではよくあることのようで、スタンジンは「まったく覚えていません。」と苦笑いした。
 
スタンジン、この7月のラダックツアーで再会しましょう。お土産は大中小のS字フックでいいですか?

2015年4月 スタンジンの娘たちと

2015年4月 スタンジンの娘たちと

追記
そのほか生まれて初めてのフレンチトーストに感動していた。また、店内の「スーホーの白い馬」(第118話)を気に入ったのでプレゼントしてあげた。15歳の娘が日本語を勉強しているので教材に使うとのこと。


森のくすり塾では宿泊業務をしていません。宿泊希望の方は近くの別所温泉がお勧めです。

おまけ(スパイスクッキーMOVIE)

小川さんのイベント・講座・旅行

アムチ小川康さんと歩く、聞く、学ぶ

【現地集合】~信州上田・別所温泉で学ぶ~百薬-ひゃくやく-の世界2日間・特別編

出発日設定2026/03/14(土)
ご旅行代金36,500円
出発地別所温泉駅

アムチ小川康さんと行く

暮らしに息づくラダック伝統医学 9日間

出発日設定2026/07/18(土)
ご旅行代金588,000円
出発地東京(羽田)

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