【特集】スピティとキナウルの谷

スピティの中心地カザの街を見下ろす スピティの中心地カザの街を見下ろす

雪山と峡谷が織りなす曼荼羅世界・スピティ、キナウル

スピティはヒマーチャル・プラデッシュ州の北東部、中国の西チベットとインドの国境地帯に位置しています。歴史的にチベット西部のンガリ地方に属し、10~11世紀に栄えたグゲ王国時代には多くの仏教寺院が建設され、現在も美しい壁画や塑像など貴重な仏教美術が残されています。特にタボに残される立体曼荼羅は「ヒマラヤのアジャンター」とも称され、チベット仏教圏でも随一の見ごたえです。
イギリス統治時代の夏の首都シムラーからヒンドゥ教圏である下キナウルを抜け、チベット仏教圏である上キナウル、そしてスピティと、サトレジ川沿いに変わっていく人々の暮らしも興味深く、高く白いヒマラヤの峰々と、えぐるように流れる深い渓谷が織りなす、荒々しくも美しい風景は息を呑むほどです。

スピティのお婆ちゃん
緑の帽子が目印 キナウルの人々 緑の帽子が目印 キナウルの人々


目次


主な見どころ<スピティ>

タボ・チョスコル・ゴンパ

スピティ観光最大の目玉。別名「ヒマラヤのアジャンター」。10世紀に創建された仏教僧院で、ラダックのニャルマ・ゴンパ、グゲ(西チベットのツァンダ)のトリン・ゴンパとともに「リンチェン・サンポの三大寺」とされている。お寺の境内に点在するお堂は、分厚い土壁で覆われ、窓の無い構造。村のお婆ちゃんたちが案内役になってくれて微笑ましい。

お寺の中心となる集会堂(ツクラカン)の左右には32体の菩薩像、中央には四方を向く4体の大日如来、奥には阿弥陀(無量光寿)如来が配置され、日本の東寺のように、立体の曼荼羅の様相を呈している。堂内の写真撮影は原則禁止。入場時にカメラやスマホは預けなければならない。

貴重な塑像と壁画が残るタボチョスコル・ゴンパ 重な塑像と壁画が残るタボ・チョスコル・ゴンパ
タボの街とゴンパタボの街とゴンパ


(参考)タボ・チョスコル・ゴンパの公式サイト

ラダック旅行の基礎知識 その1 アルチ寺の仏教美術とリンチェン・サンポ

キー・ゴンパ

スピティの中心地カザから北西に約11㎞。小高い丘の上に建ち、城砦のような美しい外観が印象的なゲルク派の僧院。リンチェン・サンポの創建とも言われるが、実際はよく分かっていない。リンチェン・サンポの化身ラマ(生まれ変わり)が座主を務めているが、普段はデリー在住。ゲルク派の僧院だけあって、僧侶学校が併設されていて修行する小坊主の数も多い。以前、ダライ・ラマ14世がカーラチャクラの灌頂を行い、その際に宿泊した部屋が公開されている。

スピティを象徴するキー・ゴンパ スピティを象徴するキー・ゴンパ
キー・ゴンパの小坊主たち キー・ゴンパの小坊主たち


ダンカル・ゴンパ

岩山の尾根の上に建つダンカル・ゴンパは、かつてスピティ地方の中心地で、「ノノ」という領主が支配していた。
現在、新しいお寺が谷を挟んで反対側に建設されていて、ほとんどのお坊さんたちはそちらに住んで修行している。周囲にはホテルや食堂もある。
古いお寺は岩山の洞窟を利用して建てられたので、複雑な構造になっているが、老朽化が激しく一度に大勢が入場すると床が抜けるということで入場制限がされている。

ダンカル・ゴンパ ダンカル・ゴンパ
ダンカルの壁画 ダンカルの壁画


ラルン・ゴンパ

ラルン・ゴンパはリンチェン・サンポが持っていた杖を地面に突き刺し「この杖から木が生えたらこの地に仏教が根付くだろう」と言ったところ、杖は見事な木になったため、この地にお寺が建てられたと伝えられている。
セルカンというお堂の中は、タボ寺によく似た塑像で壁一面が埋め尽くされていて立体曼荼羅を構成していて見ごたえあり。美しい農村で、村歩きも楽しめる。
スピティを取り上げた数少ない作品である謝孝浩さんの著書『スピティの谷へ』の舞台は主にこのラルンとダンカール。

ヤクで畑を耕す(ラルン村) ヤクで畑を耕す(ラルン村)
ラルン・ゴンパの大日如来像 ラルン・ゴンパの大日如来像


ピン渓谷とクングリ・ゴンパ

アイベックスやユキヒョウなど希少な野生動物が生息するピン渓谷は国立公園に指定されている自然の豊かな地域。クングリにはスピティ地方では珍しいニンマ派のクングリ・ゴンパがあり、8世紀の創建とされている。現在は新しいお堂が建設されているが、その脇にあるツクラカン(ゴンカン)と呼ばれる小さなお堂は650年ほど前のものだとされ、もともとここがお寺の基礎。堂内には古い壁画や塑像が残されている。

美しいピン渓谷 美しいピン渓谷
クングリ・ゴンパに残された古い壁画クングリ・ゴンパに残された古い壁画


主な見どころ<キナウルとシムラー>

ナコ・ゴンパとナコの村

小さな湖(というよりも池)のあるナコ村は、キナウル地区に属しているが、文化的にはチベット仏教圏に属し、石造りの建物が多い散策の楽しいかわいい村。村のお堂にはグル・リンポチェの足跡の残された石が奉られている。村にあるナコ・ゴンパはリンチェン・サンポの創建といわれ、古いお堂(ロツァワラカン)には立体の塑像や壁画などが残されている。

のんびりとしたナコ村 のんびりとしたナコ村
ナコ村のキナウリの少女 ナコ村のキナウルの少女


カルパとレコン・ピオ (キナウル・カイラス)

レコン・ピオはチベットのカイラス山に住んでいるシヴァ神が冬の間やってくるとされる聖山キナウル・カイラスの麓の街。キナウル地方の中心となる街で仏教文化圏とヒンドゥー文化圏の境界となっている。
カルパはレコン・ピオから車で30分ほど山側に登ったキナウル・カイラスの展望地。多くのホテルのほか、ヒンドゥー寺院や仏教寺院が集まっている。

レコン・ピオの街 レコン・ピオの街
カルパのヒンドゥ寺院 カルパのヒンドゥ寺院


シムラー

ヒマーチャル・プラデッシュ州の州都。人口約17万人(2011年)。丘の斜面に驚くほど大きな街が広がっている。坂が多く、上下の移動が不便なのでメインストリートであるthe mallへ向かう「リフト」と呼ばれるエレベーターが設置されている。以前は田舎の寒村だったこの地は、1864年にイギリス領インドの夏の首都となり、現在も当時の建物が数多く残されて当時の面影を偲ばせる。最近では避暑地としてインド人観光客が押し寄せ、一大観光地となっている。

山の斜面にへばりつくシムラの街 山の斜面にへばりつくシムラーの街
シムラーのメインストリート シムラーのメインストリート


スピティ&キナウル ゼネラルインフォメーション

地理とアクセス

スピティの平均標高は3500mほど。万年雪を抱く高山から流れ出るスピティ川の渓谷沿いに村が点在している。キナウルはスピティ川が流れ込むサトレジ川が山を切り裂き築いた谷の切り立った断崖沿いに広がり標高は2000m~3000mほど。

スピティ渓谷の中心カザやタボへは、ヒマーチャル・プラデーシュ州の州都シムラーからキナウル渓谷を抜けレコン・ピオを経由する南周りのルートと、同じくヒマーチャル・プラデーシュ州のマナリからロータン・ラ峠、クンザム・ラ峠を越える北周りルートがある。
南回りルートは1年中通行できるが、北周りルートは峠が積雪で道が閉ざされる冬季(11月~5月)は通行できない。南回りルートも夏の雨期はがけ崩れが頻発し、通行止めの恐れがある。基点となるシムラー、マナリ(近郊のクル)へはデリーから国内線も飛んでいる。

雪のロータン・ラ峠(10月) 雪のロータン・ラ峠(10月)
崖を削って作った道路(南周りルート) 崖を削って作った道路(南周りルート)


旅行シーズンと気候

春・秋=乾期(3-6月、9-10月)
スピティを訪れるベストシーズン。寒さも和らぎ、最高気温は20-30℃、最低気温は0-15℃ほどになります。道路状況も安定しています。インド人観光客も多い。

夏=雨期(7-9月)
雨期=モンスーンシーズン。麦畑は収穫の季節を迎え、美しい風景が広がり、気温は高くなりますが、1年中の降水量のほとんどがこの時期に集中するため、スピティと外部を繋ぐ道路が崖崩れのために寸断されることも珍しくありません。

冬=乾期(11-2月)
厳しい寒さのために、農閑期に入り、多くの僧侶が暖かい地方へ移動するなど、あまり観光には向かない季節だが、ユキヒョウ、ブルーシープなどの貴重な野生動物を観察するには最適な時期。また、マナリとカザを結ぶ峠(北周りルート)は雪で覆われるため、通行が出来なくなります。気温はマイナス20℃以下にもなることもある。


スピティ 基本データ

行政区分 インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州(Himachal Pradesh:略称H.P)のラホール&スピティ地区(Lahaur & Spiti Distt)。ヒマーチャル・プラデーシュとは「雪山の州」の意味。
主要都市 HP州の州都:シムラー(人口約17万人)スピティ地区の中心はカザ(人口約2000人)、キナウル地区の中心はレコン・ピオ(人口約2500人)
言 語 スピティ語、キナウル語、更に北のラダック語、ラホール語は、同じチベット系の言語の方言レベルの違いで、互いに意思疎通に問題は無い。公用語はヒンディ語のほか、英語も通じる。
民族宗教 スピティでは主にチベット仏教を信仰するスピティ人が、キナウルではチベット系のキナウル人(キナウリ)が暮らす。スピティに近い上キナウルではチベット仏教が、シムラーに近い下キナウルや、マナリなどではヒンドゥー教が中心。スピティ、キナウル、ラダック、ラホールは文化、宗教的にも近く、地域内での通婚も盛ん。
通 貨 インドルピー。1ルピー=1.54円(2019年12月)1米ドル=70.90ルピー(2019年12月)
両 替 大都市の空港や銀行、両替所やホテル等で日本円、米ドルからインドルピーに両替可能。地方では米ドルのみ。
ビザ・許可証 インド入国には観光ビザが必要。そのほかスピティに行くにはインド・中国の国境付近を通過するための許可証Inner Line Permit(インナーライン・パーミット=ILP)が必要。
旅 券 出国予定に6ヶ月以上の残存期間が必要
時 差 日本時間とインドには3時間30分の時差がある。日本が正午12時の時インドは8時30分。サマータイムはない
通 信 通信事情は非常に悪い。ホテルなどでWiFiが繋がってもスピードは非常に遅い。2019年10月現在4Gケーブル敷設工事中。
食事事情 メインはインド料理(カレー)。スピティ料理もあるが、レパートリーも少なくチベットやラダック料理と大差ない。ツーリスト向けに洋食も提供される。インドはレストランでのアルコールの提供が制限されているので大きな都市のホテルやレストラン以外では飲酒が難しい。


<スピティを訪ねるツアー>

5名催行日本語ガイド添乗員早割

2023/04/29(土)
ご旅行代金518,000円