添乗報告記●青蔵鉄道で行く絶景の旅 冬のチベット仏教巡礼9日間 (2025年12月)

ツアー名: 青蔵鉄道で行く絶景の旅 冬のチベット仏教巡礼9日間
旅行期間: 2025年12月27日(土)~ 2026年01月04日(日)
文・写真: 立花誠(東京本社)

閑散としていて寂しいけれど、貸切感がありました。

閑散としていて寂しいけれど、貸切感がありました。(シガツェのタシルンポ寺)

約3カ月ぶりに青蔵鉄道で行くチベットのツアーに同行してきました。よくある青蔵鉄道ツアーと違い、ヤムドク湖から西に向かい、ギャンツェやシガツェも訪れるちょっと特別感のあるツアーです。私自身ラサ以西は初めてだったので、このコースの添乗が決まってから、ずっと出発日を指折り数えていました。

ツアー中に「実はヤムドク湖から西への添乗は初めて」とカミングアウトしたところ、お客様との距離がぐっと縮まりました。
1970年代、NHKのドキュメンタリーでチベットの死生観をテーマにした番組を視聴し、古色蒼然としたギャンツェやシガツェの街並みに深く惹かれたのを覚えています。当時にして鳥葬が行われている事実に驚愕しましたが、それ以上に驚くべきは、今なおそれが民草の葬送として普遍的に存在していることです。そこに、時を超えた圧倒的な死生観を感じずにはいられません。

今回参加の12名様のお客様のうち、ご家族で参加の2名様を除いて、10名様が単独でのご参加。旅好き、チベット好き、仏教好きなど、普段はなかなか趣味を同じくする人がいない方が多いようですが、嗜好の近い方が集まって団結力ある良いグループになりました。

人気のない(?)西寧と青蔵鉄道

巡礼者がいない、少ない、と探していたら、お堂の前に大勢いらっしゃいました。

巡礼者がいない、少ない、と探していたら、お堂の前に大勢いらっしゃいました。

チベット文化圏の入口は、今回も西寧。国内線のフライトキャンセルにより、初日は西安まで飛んで一泊したため、西寧には2日目の朝に到着、晩には青蔵鉄道に乗車するというスケジュールになりました。西寧ではチベット仏教ゲルク派の開祖であるツォンカパの生誕地タール寺を訪れました。極寒を覚悟しての西寧観光でしたが、気温は日本の同時期より少し低いと感じられるぐらいで、日が差すと、暖かさすら感じられました。しかし、数日前に雪が降ったとのことで、タール寺の境内では、日が当たらない場所に雪が少し残っていました。「五体投地」とは、身口意(体と言葉と意識)すべてを投げ出して御仏への祈りをささげるチベット仏教独特の礼拝法。このタール寺で初めて「五体投地」をご覧になったお客様方は、チベット文化圏の入口に立ったと実感しておられたようです。

「あ、わんちゃんが五体投地してる!」の声の先に目線を向けると…。

わんちゃんの五体投地。動画でお見せしたかった。

わんちゃんの五体投地。動画でお見せしたかった。

観光後、西寧でスーパーマーケットに寄りました。通常、青蔵鉄道に乗車する日は、スーパーマーケットに立ち寄り、個人的な飲み物やおやつなどを各自、調達します。夕飯の支度をする時間、いつもならばごった返しているスーパーマーケット。この日はなぜかお客さんが少なくて、のんびり見物もできました。カエルや、見たこともないお魚を見てびっくりする方もいらっしゃいました。デリカなどが売られているコーナーでは、焼きたてパン屋さんにつかまり、延々と「おいしいパンはコレとコレ」と勧められました。

スーパーマーケット➁焼きたてパンのコーナーでも人影まばら

焼きたてパンのコーナーでも人影まばら

夕食後、西寧駅へ。西寧駅は空港と見まごうばかりの巨大な駅。コンコースに入るには、顔認証と荷物検査が必要です。さらに列車に乗る際に、切符とパスポートを車掌さんがチェックします。

ここを抜けるともう一つ、荷物の保安検査があります。

ここを抜けるともう一つ、荷物の保安検査があります。

青蔵鉄道でいざ、ラサへ!

青蔵鉄道でいざ、ラサへ!

青蔵鉄道の車内探検へ

朝起きると、まず、硬座(2等椅子席)に行ってみました。カメラを向けるとこどもがはにかみながらポーズをとってくれました。

少しはにかみながらポーズを取ってくれた女の子’(軟座)

少しはにかみながらポーズを取ってくれた女の子(硬座)

次に硬臥(2等寝台)に行ってみました。この時期は巡礼客が多いと聞いていたけれど、硬臥には誰もいません。巡礼者はみなさん椅子席なんでしょうか?

いつもはぎゅうぎゅう詰めの硬臥のコンパートメントが、閑散と・・・

いつもはぎゅうぎゅう詰めの硬臥のコンパートメントが、閑散と・・・

食堂車は、食事の時間以外は喫茶店。この日は乗務員さんがチベットカモシカとユキヒョウのぬいぐるみを売りに来ました。秋に行った折に買った子たちよりもかわいくなっている・・・。

かわいいぬいぐるみ。チベットスナギツネはないのかな?

かわいいぬいぐるみ。チベットスナギツネはないのかな?

その日の夕方、ラサに到着。ラサでは数多のマニ石が奉納されている聖地サンゲ・ドゥングではマニ石の祠を巡拝(コルラ)したりサンを焚いたりしました。歴代ダライ・ラマの夏の宮殿ノルブリンカや、チベット仏教の大本山ジョカン(大昭寺)と門前町のようなバルコル街、歴代ダライ・ラマの宮殿ポタラ宮、ゲルク派ラサ3大僧院のひとつで問答が有名なセラ寺を訪れ、民家では年越しの儀式を体験しました。民家での年越しは、大阪から別のツアーで来られたお客様と一緒にお祝いしました。

いざ、ラサ以西へ

元日の朝、初日の出に一年間の安寧をお祈りし、ラサを出発し、まずヤムドク湖に向かいました。湖畔で「プレ・ランチ」を食べましょうと、チベットで作られるヨーグルトとバナナを持参、どうせなら静かな湖畔でと、あまり人のいない湖畔へ。ヤムドク湖と言えば、お土産屋さんが並び、チベット犬(チベタン・マスティフ)や白い毛のヤク、白い毛の仔山羊と一緒に写真を撮るスポットがたくさんあるイメージでしたが、今回訪れた湖畔は、のんびりと湖の色を楽しむことができました。燦燦と降り注ぐ陽光にきらめく湖水はエメラルドグリーンで、「トルコ石の湖」と呼ばれる理由が、よくわかります。プレ・ランチを楽しんだり、白い毛のヤクやチベタン・マスティフと記念撮影をしたりしました。前述したように、今回の旅は、ラサを訪れた後、ギャンツェ、シガツェへ足を延ばしますが、ここからは私も初めての地です。

こんな静かなヤムドク湖、見たことない

こんな静かなヤムドク湖、見たことない

標高5,020mのカロラ峠に立ち寄りました。バスを降りて展望台へとお客様をご案内してゆきます。深呼吸しながら一歩一歩ゆっくりと進みますが、ラサで高度順応をした方たちも「こ・こ・は・さ・す・が・に・き・つ・い・ネ」と青息吐息。地球温暖化の影響で、だいぶ後退してしまったという氷河。それでも日本では見ることのできない風景に、お客様方は大喜び。氷河の足もとには、牧畜農家のカルカ(家畜の囲い)が見えました。廃墟ではないのに人がいる気配がない、ということは、ここは夏場だけの放牧地で、住民はトランスヒューマン(季節により居所を変えてその季節に適応した場所でひとつの生業に従事する人たち)なのでしょうか? 近くに人がいなかったので、想像の域を出ませんが、仮に一年の半分だとしても、このような高地で生活している人がいるんだと、改めて思いました。

年々氷河が後退しているとか。温暖化の波はここにも・・・

年々氷河が後退しているとか。温暖化の波はここにも・・・

夕方、「英雄都市」ギャンツェに着きました。
ギャンツェは、チベットのラサやシガツェと、国境を越えてブータン、シッキム、インド、ネパール等とを結ぶ交易ルート上に位置していて、交易都市として発展しました。かつてはギャンツェ王の居城であったギャンツェ・ゾンは、1903年に侵攻したイギリス軍を苦しめたことで知られ、「英雄都市」という枕詞のもととなりました。

ギャンツェの中心に位置する、15世紀初頭に建立された名刹・白居寺(パンコル・チューデ)を拝観しました。ここにはチベットで最大級のネパール様式の仏塔パンコル・チョルテンがあります。仏塔には75の部屋があり、それぞれに彩色豊かな貴重な仏像・明王像・護法神像、壁画が納められています。仏塔に登り、いちばん下の回廊を歩きました。2階へと続く階段がある部屋は「解脱」、そこにいちばん近い部屋は「兜率宮殿」。兜率宮殿とは、56億7千万年後に弥勒菩薩(未来仏)がこの世に降りるまで修行する場所とされます。日の傾いた時間、穏やかな陽光に包まれて兜率宮殿にお参りし、「解脱」の入口をくぐると、なんとなく極楽浄土に近づけたような、浄化されたような気分になりました。

仏塔の回廊をコルラするだけでご利益がありそうなパンコル・チューデ

仏塔の回廊をコルラするだけでご利益がありそうなパンコル・チューデ

観光客はもちろん、巡礼者もいない静かな境内に、お客様の足音と、ガイドの声だけが響きます。空は青く、白い仏塔がひときわ映えます。
拝観を済ませ、残照の中、バスに乗り、ホテルへと移動します。
ホテルに着いた頃には、日も落ちて、町はずれの丘にライトアップされたギャンツェ・ゾン(ギャンツェ城塞)が浮かび上がっていました。

ライトアップされたギャンツェ・ゾン

ライトアップされたギャンツェ・ゾン

翌1月2日の朝、ギャンツェの街歩きを体験しました。白居寺の入口へと続くメインストリートは、さながら門前町といった感じで、いろいろなお店が軒を連ねています。時間が早かったためか、一部のお店は開いているものの、殆どのお店はまだシャッターをおろしていました。朝早くから白居寺にお参りする人のため、お線香のように焚くサンや、お供物のお酒を売るお店は朝早くから開いています。高野山の参道で高野槙を売っていたり、お稲荷さんの境内の水茶屋でお供えのお酒を売っていたり、いつか見た日本の寺社の風景に通ずるものがありました。
街歩きって、本当におもしろい。現地の人の生活圏を歩くと、地元の人ご用達のお店(いわゆる「なんでも屋さん」)があったり、家の周辺を掃除している人がいたり、近隣住民に可愛がられているだろう、飼い犬が、町ゆく人に媚びを売っていたり・・・。

お供え用のお酒を売っていました。日本でいうところのお神酒ですかね。

お供え用のお酒を売っていました。日本でいうところのお神酒ですかね。


手前の台の上にある干し草のようなものが、サン。日本でいうところのお線香でしょうか?

手前の台の上にある干し草のようなものが、サン。日本でいうところのお線香

古刹シャル寺とシガツェのタシルンポ寺

午前中はシガツェ郊外に建つシャル寺を拝観しました。ゲルク派の開祖ツォンカパに多大な影響を与えたプトゥン・リンチェン・ドゥプが14世紀に座主を勤めた、11世紀創建の古刹です。サキャ派の傍系から分派したシャル派の寺院で、堂宇はチベット建築と中国建築の折衷様式となっています。本堂内部には、プトゥンが座主に就任した際に、近隣を治めていた王により寄進されたというネパール美術の粋を集めた壁画が多く残されています。また、羅漢像が並ぶ「阿羅漢殿」や、穢れを祓う明王を祀る「烏枢沙摩(ウスサマ)明王殿」、経典の間など、見ごたえのあるお寺です。

独特の建築様式が見もののシャル寺

独特の建築様式が見もののシャル寺

午後はシガツェ市外に建つ名刹・タシルンポ寺へ。この寺院はゲルク派六大僧院のひとつで、後にダライ・ラマ一世となるゲンドゥン・トゥプによって1447年に建立されました。のちに、無量光仏(日本でいう阿弥陀如来にあたる)パンチェン・ラマの冬の宮殿となりました。境内には4世パンチェン・ラマ、10世パンチェン・ラマのミイラが収められた仏塔殿、火災でミイラが消失してしまった5世~9世パンチェン・ラマの合同仏塔殿があります。ゲルク派四大僧院(タシルンポ寺、ガンデン寺、セラ寺、デプン寺)にも、六大僧院(四大僧院に加えて青海省のタール寺、甘粛省のラプラン寺)にも数えられる名刹なので、さぞかし巡礼者や参拝者がいっぱい来ているだろうと思っていましたが、閑散としていて、僧院の周辺には人っ子一人いない感じでした。お客様のだれかが「まるで我々だけの貸切ね」と言われて、思わず納得。5世~9世のパンチェン・ラマの合同仏塔は新しい建物ながら、壁画に特徴がありました。過去仏のカシャッパー現在仏の釈迦如来-未来仏の弥勒菩薩が描かれていますが、弥勒菩薩が法体(普通は装飾品をまとっている)なので、珍しいと思いました。

この奥にパンチェン・ラマ歴代の合同仏塔が祀られています。

この奥にパンチェン・ラマ歴代の合同仏塔が祀られています。

チベットを発つ日、シガツェのホテルを早朝に出発、未明の街道を東に向かいます。

途中、ゴンカル寺を訪れました。
15世紀創建のサキャ派の名刹で、密教の仏様の壁画が納められています。男女が合体した姿の仏像に驚きの声があがっていました。「女性の❝智恵❞と男性の❝方便❞が融合することによって究極の悟りに到る」という教えを具現化したものだそうです。また、憤怒相の護法神も、躍動感が感じられるものでした。
チベットから帰国してすぐに高野山に行きましたが、弘法大師が唐から持ち帰った密教には、こうした教えは含まれていませんでした。なぜなら弘法大師が唐で学んでいた時代には、まだインド(仏教界)から、この教えがチベットに入っていなかったためです。

ゴンカル寺の本堂の入口。この先には貴重で美しい仏様の壁画が待っています。

ゴンカル寺の本堂の入口。この先には貴重で美しい仏様の壁画が待っています。

今回はギャンツェ、シガツェまで足を延ばし、通常の青蔵鉄道のコースには含まれていない名刹の数々を訪れることができ、お客様も満足されていました。

巡礼者が殆どいなくて閑散としていたけれど逆に「貸切感」があったし、民家で年越しの儀式を体験できたし、寺院で熱心に祈りを捧げる方たちに会えたし、手で結ぶ蓮の花の印を習ったり、寺院でお正月に提供されるツァンパのお供物のおすそ分けを頂いたりと、もりだくさんの体験ができました。機会があれば、また行ってみたいコースでした。

関連よみもの



チベット関連ツアー

巡礼シーズンに訪れる聖なる都

ツアー終了ツアー 青蔵鉄道で行く 冬のラサ7日間

6名催行日本語ガイド添乗員早割90早割120

世界最高所を走る青蔵鉄道に乗ってチベットの聖都ラサを訪れます。冬は農閑期のためラサにはたくさんの巡礼者が訪れ、街は熱い信仰心で満たされます。
出発日設定2025/11/01(土)~2025/12/28(日)
ご旅行代金478,000円~498,000円
出発地東京(成田または羽田)、※大阪(関西空港) 

詳細を見る


冬の巡礼シーズンに訪れる

終了ツアー 青蔵鉄道で行く絶景の旅 冬のチベット仏教巡礼9日間

世界最高地点を走る青蔵鉄道で行く冬のチベットの旅。ラサの主な見所のほか巡礼地、「トルコ石の湖」ヤムドク、城塞都市ギャンツェ、大僧院タシルンポにも足を延ばします。大晦日は民家で年越しの儀式も体験。
出発日設定2025/11/22(土)~2026/1/10(土)
ご旅行代金578,000円~598,000円
出発地東京(成田または羽田発着)、東京(成田発・羽田帰着)

詳細を見る


6名催行日本語ガイド早割120早割180

世界最高所を走る青蔵鉄道で聖都ラサを訪れます。ポタラ宮、ジョカン寺のほか、チベット最大の夏の祭典ショトゥン祭を見学。ノルブリンカではピクニックランチを楽しみ、「トルコ石の湖」ヤムドクも訪れます。
出発日設定2026/08/08(土)
ご旅行代金638,000円
出発地東京(成田)発

詳細を見る


「トルコ石の湖」ヤムドク湖も訪れる

終了ツアー 青蔵鉄道で行く 遙かなる聖都ラサ8日間

世界最高所を走る青蔵鉄道で聖都ラサへ向かい、ラサの主な観光地のほか地元の巡礼地も訪れ、民家を訪問して家庭料理を頂き、日常生活も垣間見ます。「トルコ石の湖」ヤムドク湖では絶景ランチも楽しみます。
出発日設定2025/05/22(木)~2025/8/10(日)
ご旅行代金498,000円~638,000円
出発地東京(羽田)発

詳細を見る


ラサのお祭見学も! 「トルコ石の湖」ヤムドク湖も訪れる

終了ツアー 青蔵鉄道で行く 遙かなる聖都ラサ9日間

世界最高所を走る青蔵鉄道で聖都ラサへ、地元の巡礼地や民家を訪れ家庭料理を頂き、日常生活も垣間見ます。「トルコ石の湖」ヤムドク湖でランチ。ラサ郊外の夏祭イェルパ・ツェチュも訪ねます。
出発日設定2025/08/28(木)
ご旅行代金558,000円
出発地東京(羽田)発

詳細を見る

チベットツアーをすべて見る

シェアする

コメントを残す

※メールアドレスが公開されることはありません。